富士山の麓の街、富士吉田市に生まれ育ち、溶岩を見つめ続けてきた佐藤俊明。溶岩台地に育まれた豊かな緑と、湧き出る湧水群に囲まれた土地で、溶岩に魅入られていった。何故、溶岩はこれほど人の心を癒すのだろう。どうして植物がすくすくと育つのだろう。清らかな水が生まれるのは何故だろう。その不思議な力に驚き、謎を解き明かそうと、多孔質で変化に富んだ組成や遠赤外線の効果を調べあげていった。やがて彼はそのメカニズムを解明するだけでなく、溶岩の持つ秘められた力を活かす方法を模索しはじめた。機能と効率ばかりを追求する現代社会にあって、失われてしまった自然環境を都市に回復すること。そして、自然豊かな風景、美しい日本を将来の世代に残していこうとする試みのために、である。

いつしか溶岩を素材とした景観修景と環境改善が彼のライフワークとなった。全国の都市や河川の環境改善を目的とした修景事業で、溶岩を扱ったナチュロック製品が採用されるようになった。そして、そこでは失われた自然の風景に近い環境が取り戻されていった。1985年6月、富士山6合目に溶岩ブロックを納入以来、その数は10,500カ所を上回り、環境への問題意識がますます高まる今日、各地の修景事業でナチュロック製品の需要が着実に高まっている。

彼は溶岩の秘められたパワーを、もっと身近に、じかに用いることができないだろうかと考えはじめた。

溶岩と向き合い、25年の歳月が経った2009年1月。世界十数カ国、100種類を超える溶岩の中から、質感と美観にひときわ優れた溶岩に佐藤は出会った。多孔質で美しく、宝石の一粒に匹敵する石である。彼はその溶岩をジュエリーとして活かせないかと考えた。トラックに積まれた何トンもの溶岩の山から厳選した一粒を磨き、銀の台座に嵌め込んだ。そして植物から抽出したシリカと溶岩パウダーを練り込んだゴムのバンドと組み合わせてブレスレットに仕立てた。黒ダイヤなどをあしらった装飾はシンプルに、あくまでも溶岩が主役。多孔質な溶岩にはアロマオイルを含ませる。溶岩の遠赤外線機能とアロマテラピー効果を併せ持たせた仕掛けである。

2009年2月にはアカデミー賞VIPパーティーにてナチュロック溶岩ジュエリーを発表。マイケル・ジャクソンの父、ジョー・ジャクソンをはじめとするハリウッドに暮らすセレブの方々から絶賛され、2009年夏、アメリカ西海岸サンタモニカの「フレッドシーガル」にてデビューすることになった。

ナチュロック溶岩ジュエリーの売上の5%は、アルピニスト野口健氏が理事長を務めるマナスル基金を通じて、世界の教育機会に恵まれない子供たちに寄贈される。ナチュロック溶岩ジュエリーは身に着けることで地球を救う活動にも役立てられる、�一歩先を行く大人の�お洒落なアイテムとして誕生したのである。

(エコ・ライター 石川正洋)